Utopia Momoiro 10

2015.10.24(sat.) -11.07(wed.)

武田 浩志

Hiroshi Takeda

「Utopia Momo-Iro 10」に寄せて

「Utopia Momo-Iro」とのタイトルが付された展覧会も、10回を迎えることとなった。タイトルに込められた意味は、当初の意味とは変容してきているが、彼の「Utopia」を探すための試みが続けられていることには変わりはない。

武田作品を基礎付けているのは、多様な試みの集積ではないかと考えていた。その痕跡は、作品のいたるところに残されている。

奥行きの逆転するための試みであったり、異素材を組み合わせるための試みであったり、偶然のように見える筆跡をコントロールするための試みであったり、その試みは多様である。

本展にあたり、武田は、portraitの「ひとがた」のモチーフ自体も素材として取り扱うことにしたと話している。

新作のportrait233では、すべての試みが等値に扱われ、積み重ねられている。同作では、ひとがたがおぼろげながら立ち上がって見えるものの、そのひとがたに気づく頃には、たくさんの試みが混然一体となって私たちに提示されていることにも気づくだろう。その試みひとつひとつに気づいた時、私たちのもつ空間の既存概念は揺らいでくる。

彼の興味は、もっぱら技術や技法、素材といった「どうやって作るか」という点に向けられており、「何を表現するのか」というものには向けられていないようにも思える。しかしながら、彼の作品は無機質なものではなく、彼の作品には、創作に対する根源的な好奇心が凝縮されている。

そんな彼の作品が、絵画の地平となっていくことを期待している。

川上 大雅